パワハラ・セクハラなどに関する法律

職場内の人権侵害(セクハラ)

雇用機会均等法は、使用者に対し、セクハラに関し、必要な措置を講ずることを義務付けている。(雇用機会均等法第11条)

① 均等法上のセクハラは、労働者の「意に反する」性的言動が対象であるので、不法行為の違法性があるとまでは言えなくても、被害者は、その主観に基づき必要な措置をとる行政手続や労働審判で要求できます。
※均等法が求める使用者が採るべき措置

①事業主の方針の明確化およびその周知・啓発(事前措置) 
セクハラの内容およびセクハラを行った場合の懲戒についての規定を制定し、それを従業員への周知・徹底する。 
②相談(苦情を含む)に応じ、適切な対応をするための必要な体制の整備(事前措置) 
③職場内におけるセクハラにかかわる事後の迅速かつ適切な対応(事後措置義務・調査義務・被害拡大回避義務・再防止義務・被害回復義務) 
④上記3つの措置とあわせて講ずべき措置である「相談者・行為者等のポライバシー保護」、「不利益取扱の禁止」

② 加害者本人に対する損害賠償請求は、通常、不法行為による請求となるので、不法行為上の違法性(社会通念上「常識」からみて相当性を逸脱していること)がなければなりません。 
但し、その判断にあたっては、労契法が就業環境整備義務を明定したこともふまえ、均等法上の措置義務の履行状況が当然に重視されるべきものです。

《裁判事例》
「ハラスメント行為の違法性は、被害者の主観的な感情を基準に判断されるものではなく、両当事者の職務上の地位・関係、行為の場所・時間・態様、被害者の対応等の諸般の事情を考慮して、行為が社会通念上許容される限度を超え、あるいは社会的相当性を超えると判断されるときに不法行為が成立する」。
金沢セクハラ事件(名古屋高裁金沢支部判決平成8年10月30日労判707号)
被告会社は、原告とS支店長が特別な関係にあることかどうかを慎重に調査し、人間関係がぎくしゃくすることないように職場環境を整備する義務があったのに、十分な調査を怠り上司の報告だけで簡単に判断し、適切な措置を採らなかった。また解雇撤回後も、被害者を被告Aの元で勤務させ、仕事の内容を制限した。被害者を配転させる、あるいは加害者を配転する等の当事者を引き離す措置を採らなかった。これは職場環境を調整する配慮を怠った。 
沼津セクハラ事件(静岡地裁沼津支部判決平成11年2月26日労判760号)
※三次会後タクシー内での上司のセクハラが問題となった事案 
一次会が会社主催であったこと、二次会に社員全員が出席したこと、三次会参加者が全員社員であったこと、本件セクハラ行為が行われた状況は被告の上司としての地位を利用してしかできないことなどから「本件セクハラ行為は、被告会社の業務に近隣して、その延長において、被告(加害者)の被告会社における上司としての地位を利用して行われたものであり、被告会社の職務と密接な関連性があり、事業の執行につき行われたというべきである」 
マヨネーズ会社事件(東京地裁判決平成15年6月6日判タ1179号)
※加害者と共同不法行為(民法第719条)が成立するとした事案 
医師会の事業の執行と密接に関連する研修旅行の際の親睦会終了後の二次会での女性職員に対する上司のセクハラ行為は、民法第719条所定の「事業の執行」につき行われたものとは言えず、 被告医師会が使用者責任を負うことはないとしたが、男女雇用機会均等法施行により、事業主は、 職場における性的言動により女性職員の就業環境が害されることのないよう雇用管理上必要な配慮を行う義務があるところ、被告医師会がセクハラ防止について組織的措置を執っていたとは言えず、被告医師会は、就業環境維持・調整義務の懈怠として原告が被ったセクハラ被害について、 
被告Aと共同責任を負うべきとして。
鹿児島セクハラ(社団法人)事件(鹿児島地裁判決平成13年11月27日労判836号)