労働条件に関する法律

労働条件変更の原則(同意なき不利益変更は無効)

・使用者が一方的に労働条件を切り下げることは出来ません。(原則)
・就業規則の変更等によらずに、労働条件を切り下げるには、労働者の同意が必要であり、同意なき一方的切り下げは無効です。
・同意を迫られた場合でも、同意する義務はありません。
・法令(労基法)、労働協約、就業規則に反する同意は無効です。
・同意に意思表示の瑕疵があれば、無効や取消を主張できます。

労働条件変更の原則

ⅰ)労働条件は、労働者と使用者の合意に基づき決定されるのが原則です。(労契法第3条①)労働条件の変更も、労使の合意に基づいて行われるのが原則です。(労契法第8条) 
労働者の同意を得ることなく、使用者が賃金等の労働条件を一方的に切り下げる例があります。この場合は、無効であり、労働者は、従来どおりの労働条件に基づく契約内容の遅効を求めることができます。 

ⅱ)労働条件の変更は、変更の内容が合理的であることが必要です。また、変更の合意(労働者の同意)は、労使対等の立場でなされなければなりません。(労契法第1条、3条①) 
そのためには、使用者が提示する労働条件変更につき、理解促進措置を十分にとることが必要となります。(労契法第4条①) 
また、労働者が同意しても、同意がなされた時の状況、使用者による理解促進装置の程度 、変更内容等について吟味し、同意の効力が争えないかを検討すべきでしょう。 

労働者の個別的な同意があっても、変更された労働条件が法令、労働協約、就業規則に反している場合には、同意は無効とされ、法令、労働協約、就業規則の定める労働条件が適用さることになます。
《 裁判事例 》
本人の同意のない基本給の一方的な減額は無効。賞与については請求棄却。
京都公告事件(京都地裁判決平成3年3月20日労判601号)
本人の同意のない報酬形態の固定給から歩合給・固定給の変更、固定給の減額は無効。 
サンルース東京販売事件(東京地裁判決平成5年11月19日労判648号)
経営不振による管理職の賃金の20%減額に異議を述べなかったとしても同意はなく無効
更生会社三井埠頭事件(東京高裁判決平成12年12月27日労判809号)
就業規則に根拠のない降格・降級は無効。
アーク証券事件(東京地裁判決平成12年1月31日判時1718号)
期間の定めのない契約から有期雇用契約への変更、賃金の引き下げについて、異議がなかったからといって黙示の同意は認めれない
ヤマゲンパッケージ事件(大阪地裁判決平成9年11月4日労判719号)
本人の同意のない業績悪化を理由とする賃金減額装置は無効。 
ザ・チェースマンハッタン銀行事件(東京地裁判決平成6年9月14日判時1508号)
争点の一つである全従業員を対象とした給与減額措置の効力について、労働者の同意がないことを理由に無効とした。 
中根製作所事件(東京高裁判決平成12年7月26日労判789号)
期間の定めのない定時社員から6ヵ月契約への変更は、本人の同意がなく無効。 
駸々堂事件(大阪高裁判決平成10年7月22日労判748号)